郵送によるがんの検査キットも購入出来ます。
大腸は消化吸収が行われた食べ物の最終処理をする消化管で、主に水分を吸収します。長さは約1・8mで口側から肛門側に盲腸(もうちょう)、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸に分けられます。この部位に悪性腫瘍が発生した場合に大腸がんと呼びます。
大腸がんは食事の欧米化、とくに動物性脂肪や蛋白質の過剰摂取などにより、日本でも近年急速に増えています。毎年約6万人が罹患(りかん)し、胃がんを追い抜くのは時間の問題といわれています。日本人では直腸とS状結腸に多く発生します。罹患の頻度は男性、女性ともに同じで、60代がいちばん多く、70代、50代と続きます。若年者の大腸がんでは遺伝的な素因もあるようです。
症状
早期の大腸がんではほとんど自覚症状はなく、大腸がん検診や人間ドッグなどの便潜血検査で見つかることがほとんどです。進行した大腸がんでは、腫瘍の大きさや存在部位で症状が違ってきます。
右側大腸がんでは、管腔が広くかつ内容物が液状のために症状が出にくく、症状があっても軽い腹痛や腹部の違和感などです。かなり大きくなってから腹部のしこりとして触れたり、原因不明の貧血の検査で発見されることもあります。
左側大腸がんでは、比較的早期から便に血が混ざっていたり、血の塊が出たりする症状がみられます。管腔が狭く内容物も固まっているため、通過障害による 腹痛、便が細くなる、残便感、便秘と下痢を繰り返すなどの症状が現れ、放っておけば完全に管腔がふさがって便もガスも出なくなり、腸閉塞(ちょうへいそく)と呼ばれる状態になります。
直腸がんでは左側大腸がんとほとんど同様の症状がみられますが、肛門に近いために痔と間違えられるような出血があり、痔と思われて放置されることもあります。また、直腸がんでは近接している膀胱や子宮に浸潤(しんじゅん)すると、排尿障害や血尿、腟から便が出たりするなどの症状がみられることもあります。
治療法
大腸がんの治療の原則は、がんを切除することです。大腸の壁は内腔側より粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)となって います。がんが粘膜下層までにとどまっているものを早期がんといいますが、早期がんのなかでも粘膜下層の浅いところまでであれば転移の心配はなく、内視鏡 での治療が可能です。また、肛門に近いところにできた早期の直腸がんではおなかを開けずに手術を行います。
リンパ節転移の可能性があり内視鏡治療ができないのものや進行したがんでは、外科手術が必要です。手術では開腹し、腫瘍を含めた大腸の一部を切除してリ ンパ節の郭清(かくせい)(きれいに取り除く)を行い、残った腸を吻合(ふんごう)(つなぎ合わせる)します。また最近では小さな傷で手術ができる腹腔鏡 を用いた治療が急速に普及してきており、早期がんばかりではなく隣接臓器に浸潤していない進行がんに対しても行われるようになってきています。
進行した直腸がんでは、肛門から離れている場合には肛門の筋肉が温存できる低位前方切除術(ていいぜんぽう)が行われ、最近ではさらに、術後の性機能や排尿機能を温存するように必要最低限の手術が行われています。それ以外では人工肛門が必要なマイルス法で手術が行われます。
人工肛門もさまざまな装具が開発されており、普通に社会生活が送れるようになっています。
がんが広がりすぎていて切除不能な場合には、抗がん薬を用いた化学療法、放射線療法、免疫療法などが行われます。
消化管の「がん」は、口腔・食道・胃・十二指腸・小腸・大腸など食物が通過する消化管内腔の粘膜面(上皮)から発生します。このうち食道がんは、下咽頭から胃に至る28cmくらいの長さの食道粘膜に発生するものをいいます。
症状
食物が正常な食道を通過する時間は短いので、食べ物が飲みにくいなどの嚥下(えんげ)障害が現れた段階では、進行食道がんであったり、食道の運動異常を来す疾患であることが多くなります。
早期の段階で診断するには、粘膜がんの状態で発見することが必要ですが、この段階ではほとんどの症例に愁訴(症状の自覚)はみられません。粘膜がんの状態 で治療されるような症例は、上部消化管内視鏡検査を含めたスクリーニング検査で発見されています。人間ドックや検診で胃の異常を指摘され、内視鏡検査を受 けた際に食道に発赤粘膜やわずかな凹凸病変などを指摘された人たちです。
ほかの消化管がんでも同じですが、今日では粘膜がんであれば内視鏡で治 療できるようになっています。ところが、進行がんになればリンパ節郭清(かくせい)を含めた手術が、患者さんの予後向上のためには必要になります。食道が んでは、胸腔内・腹腔内・頸部(けいぶ)切開による3領域のリンパ節郭清を伴う胸部食道切除と、胃または大腸による28cmくらいの長さの代用食道の作成 が必要であり、これが食道がん外科手術の基本操作です。
そのため、患者さんにとって侵襲(しんしゅう)の大きな手術が必要となる前の段階で、がんを診断することが最も求められます。また、がんの深達度(たっしんど)(食道壁内のがん浸潤(しんじゅん)の深さ)が予後に影響するので、その診断が重要です。
治療法
食道がんの治療法としては、低侵襲性(患者さんに優しい)の内視鏡による粘膜切除術から、放射線・化学療法さらには外科手術(鏡視下あるいは開胸・開腹)と多くの選択肢があります。しかし、治療法の選択基準はすべて、がんの進行度によります。
がんの進行度は、がん深達度とリンパ節転移の有無、そして他の臓器(肺、肝臓、骨など)への転移の有無で決定されます。とくにがん深達度が大きな要素となります。食道の壁の構造(図14)は、伸展した状態で3〜4mmの厚さです。この厚さのうち、どこまでがんが達しているかで治療方針を決めるので、正確ながんの深達度診断が重要です。
がん深達度の診断には、ルゴール液やトルイジンブルー液などの色素を用いた食道内の精密内視鏡検査による、がん表面のわずかな凹凸からの診断、EUS (超音波内視鏡)・CT・MRIによる診断が行われています。それぞれに特徴があり、病巣の深さによって選択されています。
日本における深達度の浅い症例(粘膜がん)での治療成績をみると、内視鏡的粘膜切除術と外科手術の成績に差はみられません。したがって、現在では粘膜のごく浅いがんに限れば、内視鏡治療が第一選択とされています。
粘膜層を超える深達度が推定される症例では、CT・MRI・EUSでリンパ節転移の有無と分布を把握し、個々の症例に応じた個別の治療方針をたてます。
初めから外科手術を選択するか、放射線化学療法(CRT)を選択するか、CRT後に効果のある症例には外科手術を行うか、あるいはそのままCRTを継続するかは、食道がん治療の専門学会でも2003年現在、まだ結論は得られていません。
さらに進行し、食道周囲臓器への直接浸潤がみられた症例に対しては、以前は積極的に外科的な合併切除が行われた時代もありましたが、労力の割には患者さんの負担が大きく、予後の改善が得られないという結論が得られており、今日では消極的です。
癌は胃壁のもっとも内側にある胃粘膜から発生する。進行すると他の臓器やリンパ節にも転移し、胃壁で成長した癌は食道や十二指腸にまでも到達する。
また、癌が胃壁を越えると肝臓、膵臓、大腸など他の臓器に浸潤し、肺や鎖骨上窩リンパ節あるいは卵巣に遠隔転移する。
組織型としては、殆どが腺癌(胃小窩や胃腺に分化する円柱上皮幹細胞から生ずる)であり、稀にガストリン等の内分泌細胞から生ずる内分泌細胞癌(=高悪性度カルチノイド)が発症する。ごく稀に、腺癌とカルチノイドの両方の性質を持った癌が生ずる。また、ごく稀に扁平上皮癌など、胃には無い筈の種類の上皮の癌が生ずる(おそらく、化生した細胞を母地とする)。
胃癌が身体の他の部位に浸潤・転移し、その先で同一種類の癌細胞からなる新しい腫瘍を形成すると、それは原発腫瘍と同一の名称で呼ばれる。例えば、胃癌が肝臓に転移した場合は肝臓にある癌細胞は胃癌細胞であり、疾患としての名称は胃癌肝転移となり、(原発性)肝癌ではない(しかし、WHOなどが行っている各臓器の腫瘍の組織学的分類には、便宜的に「転移性腫瘍」なり「二次性腫瘍」なりの項目が設けてあるのが通常である)。
胃癌と併発することが知られている卵巣のクルーケンベルグ腫瘍(Krukenberg tumor)は胃癌が卵巣に転移した癌である。この腫瘍は最初に発見した医師の名にちなんで命名されているが、胃癌と異なる疾患ではない。クルーケンベル グ腫瘍の細胞は胃癌細胞であり、原発腫瘍と同一の癌細胞である。
症状
自覚症状による胃癌の早期発見は難しい。ほとんどの場合、早期癌の段階では無症状であり、癌が進行してからでないとはっきりとした自覚症状が出てこ ないことが多いからである。また、症状があっても患者はそれほど気にならずに放置する場合が多い。胃癌は進行してくると次のような症状が出てくる。
腹痛
(胃部の)不快感
吐き気や嘔吐
食事後の胃部膨満感
食欲減退
体重減少
体調不良や疲労感
消化不良あるいは灼熱感(胸焼け)
吐血や下血・黒色便
胃癌ではじめに出現する症状は上腹部の不快感、膨満感などであることが多い。これらの症状は癌以外の消化器疾患、たとえば慢性胃炎や胃潰瘍、十二指 腸潰瘍でも認められ胃癌に特異的なものではない。これらの他の上部消化器疾患の症状に続いて、胃癌が進行すると腫瘍からの出血に伴う症状が出現する。便が 黒色となったり、軟便傾向となる。さらに胃癌からの出血がつづき、貧血が進行すると、貧血による自覚症状、たとえば運動時の息切れ、易疲労感などの症状が 現れる。さらに進行すると腫瘍の増大に伴い腹部にしこりを触れたり、食物の通過障害、閉塞症状が現れることがある。このような症状を持つ人々は医師の診察 を受けるべきである。日本では普通、消化器内科、消化器科の医師が専門的な診療にあたっている。
治療法
胃癌の治療方針は、腫瘍の大きさ・部位・拡がり、病期、全身状態、あるいは患者の希望など様々な要素を勘案し決定される。
日本では長い間、胃切除+D2 郭清(2群リンパ節までの郭清)が標準治療とされ実践されてきた。しかし近年、診断技術の発達により早期胃癌の割合が増える一方、内視鏡的切除や縮小手術 が開発され、多様な治療が行われるようになってきた。こうした状況を踏まえ、科学的根拠に基づいた治療の標準化を目指して2001年に 日本胃癌学会による「胃癌治療ガイドライン」が作成された(最新は第2版;2004年4月)。 ガイドラインでは、これまでに集積された膨大な症例の解析を基に、癌の進行度(腫瘍の深達度、大きさ、分化度、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無等)に 応じた治療法が規定されている。 たとえば、
深達度がM(粘膜内)で、N0(リンパ節転移なし)、分化型、2cm以下、潰瘍形成なし、であれば、内視鏡的粘膜切除術
StageIIもしくはIIIAなら、2群リンパ節郭清を伴う胃切除術(=定型手術)
StageIVなら、(姑息的手術+)化学療法(+緩和治療)
などといった具合である。
一方、欧米では胃癌の治療方針に大きな違いがある。日本の医師が広範なリンパ節郭清を伴う胃切除を行い、手術による癌の完全切除を重視するのに対し、欧米では手術は最小限に済ませ、術後の化学療法や放射線療法を重視する傾向にある。(後述「外科手術」も参照)
治療内容について説明されると、患者は最新の治療法について知りたいと考えるものである。癌の治療法の一部は臨床治験や未承認治療と呼ばれる実験的 な医療もある。治療方針の決定は癌の進行度や、患者の全身状態に応じていろいろと複雑である。場合によっては、診断や治療計画について患者が他の専門の医 師に意見を求める行為(セカンドオピニオン)は、十分な治療を行ううえで手助けとなる。
癌と診断された患者は、ショックやストレスを受けるのは当然の反応である。患者がこの様な気持ちを医師にあれこれと伝えようと考えても伝え難いもの である。そのような場合は、質問をリストとして書き連ねてみることもひとつの方法である。また、医師との質疑応答を覚えておく為にテープに録音する方法も 理解の手助けになる。患者によっては家族や友人が立ち会って、医師と質疑応答したり、ノートに取ったり、説明を聞く方が良い。患者が一人だけで考えたり、 医師に質問したり、医者からの返答を覚えておくことを同時に行うことは無理がある。また後になっても、他の医師に疾患自体の説明を求めたり、治療方針に関 して追加の情報を教えてもらう機会はある。
肝臓がんは、組織学的にみると実に多くの種類に分類されますが、通常は原発性肝臓がんと転移性肝臓がんに
分けて考えます。
原発性肝臓がんは、がんが最初から肝臓に発生するタイプで、肝細胞に生じる肝細胞がんと、肝臓内の胆管の
細胞に起こる胆管細胞がんが95%を占めています。
特に成人の場合には、肝細胞がんの占める割合が原発性肝臓がん全体の90%にもぼります。
したがって、一般的に肝臓がんといえば、原発性の肝細胞がんを指しています。
原発性肝臓がんには、そのほかに肝細胞・胆管細胞混合がん、未分化がん、胆管のう胞腺がんなどが
含まれますが、これらは極めてまれなタイプです。
転移性肝臓がんは、ほかの臓器のがんが肝臓に転移して起こるケースです。肺がんからの転移が最も多く、
次いで胃がん、膵臓がん、大腸がん、胆のうがん、乳がん、食道がん、子宮がん、腎臓がんの順になっています。
肝臓には、血液が流入する大きな血管ルートが二つあります。肝臓を養う肝動脈と、消化管から来る門脈という
静脈系のルートです。がんは、血液を介して転移することも多いので、二つのルートを通じて大量に血液が
送り込まれる肝臓は、がんが転移しやすい臓器といえます。
また、肝臓から送り出される血液も大量です。このため原発性肝臓がんは、肺や骨などのほかの器官に
転移を起こしやすいがんでもあるのです。
症状
肝臓がんの80%は、肝硬変を伴っています。肝臓がんの症状には、がん自体が招く症状だけでなく、
肝硬変によって引き起こされる症状も含まれています。
肝硬変による主な症状としては、全身倦怠感、疲れやすさ、食欲不振、吐気や嘔吐、歯肉からの出血や鼻血、
腹水、急激な体重増加、むくみ、腹部膨満感などがあります。
治療
外科療法、穿刺療法(ここでは経皮的エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法など、身体の外から針を刺して行う治療を一括して穿刺療法としてまとめます)、肝動脈塞栓術の3療法が中心です。この他に、放射線療法や化学療法(抗がん剤投与)などがあります。
肝切除、肝動脈塞栓術、穿刺療法は、それぞれ長所・短所があり、一概に優劣をつけることはできません。がんの進み具合、肝機能の状況などの条件を十分考慮したうえで選択されます。
1)外科療法
肝切除
肝切除は、がんを含めて肝臓の一部を切除する治療法で、最も確実な治療法のひとつです。最近では腹腔鏡による肝切除も徐々に行われつつありますが、適応は 限定されており、一般には比較的大きな皮膚切開を必要とします。術後の入院期間はおおよそ2週間で、合併症としては出血、胆汁漏、肝不全などが挙げられま す。手術に起因する死亡率は全国平均で約1〜2%程度とされています。
肝切除の対象となるか否かは、大きく1) 腫瘍条件 と2) 肝機能条件 によって決定されます。腫瘍条件とは、肝臓がんの大きさ、数、分布などを示します。一般に、比較的大きな腫瘍や、単発あるいは少数の腫瘍の場 合には肝切除が選択されますが、肝切除の対象と考える条件は、施設や時代によっても異なります。次に肝機能条件ですが、例えば黄疸や腹水のある患者さん に、過大な肝切除を行うと肝不全という重い合併症を引き起こしてしまう可能性が高いため、このような患者さんは肝切除の対象となりません。実際にはさまざ まな肝機能の検査を行って、安全に肝切除が行われる基準を参考にしながら、肝切除の適応や術式が決定されます。
肝移植
日本では、脳死肝移植は法的には認められていますが、提供者の不足などの問題によって、実際にはほとんど行われていません。その代わり、主に近親者から肝 臓の一部を提供してもらい、肝臓を移植する生体肝移植が大学病院を中心に行われています。肝臓がんに対する肝移植はミラノ基準に合致する患者さんについて は2004年1月から保険適応となっています。ミラノ基準とは前述の肝臓がんの腫瘍条件で、1) 単発ならば5cm以下、2) 3cm以下で3個以内、の場合を示します。肝移植の年齢制限は65歳以下とするところが多く、肝機能の面では肝硬変のために肝切除などの局所治療が困難な 場合に、治療法のオプションとして考えられます。
2)穿刺療法
(1) 経皮的エタノール注入療法
経 皮的エタノール注入療法とは、無水エタノール、すなわち純アルコールを肝がんの部分へ注射して、アルコールの化学作用によりがん組織を死滅させる治療法で す。超音波検査でがんの正確な場所にねらいをつけて針を刺し、エタノールを注入します。したがって、超音波でよく見えない場合は、エタノールの注入が安全 かつ十分にできないこともあります。一般にがんの大きさは3cmより小さく、がんの個数は3個以下がこの治療の対象とされています。がんの大きさ・数など の制限があることやがんの一部が残ってしまう危険性があるという欠点はありますが、比較的手軽に行うことができ、身体に与える副作用が少なく、短期間で社 会復帰できるという利点があります。
(2) ラジオ波焼灼療法
特殊な針を 体外から肝がんへ挿し込み、通電することにでその針の先端部分から熱が発生し、がんを焼灼する治療法です。通常は、超音波をガイドに行いますが、CTや腹 腔鏡などを用いて行うこともあります。これらの治療法もエタノール注入療法と同様に、がんの大きさは3cmより小さく、がんの個数は3個以下の小型肝がん が対象となります。
エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法はいずれも、「体外から肝臓へ針を刺す」という点で同じです。しかし、ラジオ波焼灼療法は、エタノール注入療法に比べて、少ない治療回数で優れた治療効果が得られることより、最近ではラジオ波焼灼療法が主流となっています。
3)肝動脈塞栓術
肝動脈塞栓術とは、がんに酸素を供給している血管を人工的にふさぎ、がんを兵糧攻めにする治療法です。大腿部(ふともも)のつけ根の部分にある大腿動脈か らカテーテルを挿し込み、先端を肝動脈へ進めます。このカテーテルを通じて、1mm角大に細かくしたゼラチン・スポンジなどを注入し、肝動脈を詰まらせ て、がんに供給する血流を遮断し、がんを死滅させます。通常、治療効果を高めるために、抗がん剤と肝がんに取り込まれやすいリピオドールという造影剤を懸 濁して、ゼラチン・スポンジを注入する前に投与します。この治療法は、がんが肝臓の内部にとどまっている限りは、解剖学的条件による制限をあまり受けませ ん。また、肝機能の制限も比較的緩く、黄疸・腹水などがなければ施行可能です。1回の治療に要する入院期間は1週間程度と短く、副作用としては腹痛・吐き 気・食欲不振・発熱などがありますが、通常は2、3日でおさまります。退院後は1〜2週間ほどで社会復帰が可能です。このように、肝動脈塞栓術は他の治療 法に比べ治療対象の制限が少ないため多くの患者さんに対して行われています。ただし、完全に治ってしまう確率はあまり高くありませんので、繰り返し行って がんを抑え込んでいくというかたちになります。
上図に肝がんのさまざまな病態ごとに、可能な治療法を示します。なお、表中のTAEは肝動脈塞栓術を、局所療法は穿刺療法を意味します。ただし、これはあ くまで大きな目安であり、肝がんの治療法は、がんのある位置などのその他の条件も含め患者さんごとに総合的に判断して選択します。
4)その他の治療
放射線療法は、骨に転移した時などに疼痛緩和を目的として行われることがあります。また、最近では陽子線、重粒子線などの放射線治療が、肝がんの治療に適 応されることもあります。化学療法は、肝切除や穿刺療法、肝動脈塞栓術などの治療で効果が得られない場合などに行われることがありますが、治療効果があま り高くないのが現状です。
前立腺癌(ぜんりつせんがん)は、前立腺に発生する病気、癌の一つ。様々な組織型の悪性腫瘍が生じうるが、殆どは腺癌であり、通常は前立腺癌≒前立腺腺癌の意味で用いられる。日本では癌死亡者の約3.5%を占める。近年は増加傾向。ただし癌の中では治癒率は高い方であるとされている。最近では今上天皇明仁もこの病気になった。45歳以下での罹患はまれで、50歳以降によく発病、その割合は年を追うごとに増加する。
欧米人では発生の高い癌で、男性死亡者の約20%でトップを占める。日本と海外の患者割合の差は、食生活の違いにあるとされる。
症状
他のがんと同じように早期の前立腺がんに特有の症状はありません。あるとしてもその多くは前立腺肥大症に伴う症状です。具体的には排尿困難(尿が出にく い)、頻尿(尿の回数が多い)、残尿感(排尿後、尿が出切らないで残った感じがする)、夜間多尿、尿意切迫(尿意を感じるとトイレに行くまでに排尿を我慢 できない状態)、下腹部不快感などです。このような症状があり、たまたま病院を受診した際に前立腺がんの検診が併せて施行され、検査の結果、前立腺がんが 発見されることがほとんどです。また前立腺がんが進行しても転移がない場合の症状は前立腺肥大症と大差はありません。
前立腺がんは進行すると骨に転移しやすいがんです。前立腺自体の症状はなく、たまたま腰痛などで骨の検査をうけ、前立腺がんが発見されることもあります。また肺転移によって発見されることもあります。
治療法
治療については、男性ホルモン(アンドロゲン)の作用を減らす事によるホルモン療法、外科手術による除去、放射線療法、化学療法などがあり、状態によって最適な治療法がとられる。グリーソン分類などによる病理学的異型度が低く、血清中の前立腺特異抗原 の値が低く、他の臓器への転移が認められない場合は、外科手術(根治的前立腺摘除術)もしくは放射線療法で根治することが期待できる。
高齢者や、転移のある場合(PSA値が高かったり病理検査での異型度が高かったりといった、転移の証明はできないものの転移が起こっている虞れが大きい場合を含む)は、ホルモン療法が選択され、エストロゲン製剤、アンドロゲン拮抗剤、LH-RH拮抗剤などが投与される。場合によっては精巣摘出手術が併用される。
前立腺癌の進行は比較的遅く、他の癌に比べると予後がよい。
この癌は「前立腺肥大症」という病気と症状が酷似しているため、早期発見が難しいと言われていたが、近年ではPSA(前立腺特異抗原)検診の普及などにより、早期に発見される症例がほとんどとなり、以前のように骨転移などをきっかけに発見される症例は激減した。
子宮は全体として中空の西洋梨のかたちをしています。球形に近いかたちの体部は胎児の宿る部分であり、下方に続く部分は細長く、その先は膣に突出していま す。この部分が頸部で、膣のほうから見ますと奥の突きあたりに頸部の一部が見えます。その中央には子宮の内腔に続く入口があり、この入口を外子宮口と呼ん でいます。
婦人科のがんで最も一般的な子宮がんには、子宮頸部がんと子宮体部がん(内膜がん)があります。
子宮頸部がんは、この外子宮口付近に発生することが多いのです。普通の婦人科の診察でこの部分を観察したり、検査すべき細胞や組織を採取することが可能です。したがって、早期発見が容易なわけです。
頸部のがんは非常にゆっくり増殖しますが、がん細胞が子宮頸部に見つかる以前の初期に正常でない細胞が見つかります。この細胞を異型細胞と呼び、細胞診ではこの段階から診断することができるのです。
年齢別にみた子宮頸部がんの罹患(りかん)率は、20歳代後半から40歳前後まで増加した後横ばいになり、70歳代後半以降再び増加します。近年、罹患 率、死亡率ともに若年層で増加傾向にあります。罹患率の国際比較では、頸部がんが途上国で高いのに対し、体部がんは欧米先進国で高い傾向があります。
ヒューマン・パピローマ・ウイルス(human papilloma virus:HPV)の感染が、子宮頸部がん、特に扁平(へんぺい)上皮がんの確立したリスク要因とされています。子宮頸部がん患者の90%以上から HPVが検出され、ハイリスク・タイプ(16型や18型など)で浸潤(しんじゅん)がんへの進展がみられやすいことがわかっています。子宮頸部がんのリス ク要因として、低年齢での初交、 性的パートナーが多い、多産、他の性行為感染症、が報告されていますが、その多くはHPV感染のリスク要因です。また、喫煙は確立したリスク要因とされて います。その他、経口避妊薬の使用、低所得階層との関連性も指摘されています。子宮頸部腺がんについても、扁平上皮がんと同様に、HPV感染や経口避妊薬 の使用との関連が指摘されています。
症状
初期の子宮頸部がんでは、全く症状がないのが普通です。婦人科の症状がなくても、30歳のころから(結婚している場合は25歳くらいからでも)、2年に1 回子宮がんの検診を受けることをお勧めします。集団検診の知らせがあったらよい機会ですから、おっくうがらずに受診しましょう。
がんが少し進行するとはじめの症状としては、月経でない時の出血、性行為の際の出血やふだんと違うおりものが増えたりします。他に月経の量が増えたり長引いたりすることもあります。
夫を失った人や高齢の婦人では性行為の際の出血ということは少ないので、頸部がんが相当進行してから後に出血を見ることがよくあります。このような方は、特にふだんの健康診断を受ける必要があります。
しかし、各地の集団検診において高齢の方の受診率が極めて低いため、高齢者の方に進行した頸部がんが今なお多いのが現状です。
治療法
子宮頸部がんには、外科療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法の3つの治療法があります。
1)外科療法
(1)早期がんに対する治療
治療は以下のうちのいずれかです。
凍結療法:がん細胞を凍らせて殺します。
高周波療法:高周波を用いて電磁波の熱でがん細胞を殺します。
レーザー治療:レーザー光線を用いがんを殺します。
(2)手術治療
外科手術は最も一般的で、医師は以下の術式のひとつを用いてがんをとり除きます。
円錐切除術
がんが見つかった子宮の頸部組織を円錐状の組織として切除します。円錐切除は生検組織をとる診断的意味の他に、早期がんでは治療的意味も含んでいます。
単純子宮全摘出術
がんに侵された子宮を摘出する手術です。子宮が経膣的に摘出されれば膣式単純子宮全摘、腹壁を切開して行われれば腹式単純子宮全摘といいます。ときには、両側付属器切除術といい、卵巣・卵管も切除されます。
広汎子宮全摘出術
患部を子宮と膣の一部を含め、骨盤壁近くから広い範囲で切除します。子宮頸部がんに関連する所属リンパ節も同時に切除します(リンパ節郭清)。通常、リン パ節は小豆のようなかたちをしており、全身に存在します。そして感染と戦う細胞を産生したり、貯蔵したりしますが、がんの時には転移したり、他臓器への転 移経路となるのでとり除かなければなりません。手術障害については、「女性生殖器がん手術後の排便・排尿障害のリハビリテーション」の項を参照して下さい。
骨盤内臓全摘術
がんが子宮頸部ばかりでなく女性性器外に拡がっていると、子宮・膣とともに下部結腸、直腸、膀胱をもとらなければなりません。これを骨盤内臓全摘術といいます。術後、人工肛門や回腸導管(回腸を用いて人工的に尿路を再建する)、造膣術など形成手術が必要となります。
2)放射線療法
放 射線治療にはがん細胞を殺し、腫瘍を縮小するためにX線や高エネルギー線が用いられます。放射線は体外から放射線を照射する外照射か、がん細胞の認められ る領域に薄いプラスチックチューブを通し、放射線を出すラジオアイソトープを使用したプラスチックを入れて治療する腔内照射とがあります。放射線単独で治 療する場合と、手術と併用して治療する場合があります。
3)化学療法(参照:がんの薬物療法)
化学療法はがん細胞を殺すための抗がん剤を使用します。薬剤は経口的に投与されたり血管または筋肉注射として投与されます。抗がん剤は血流に入り全身をめぐり、子宮頸部を越えて拡がったがん細胞を殺すので全身療法と呼ばれています。
病状に応じて、過去の治療成績に基づき、現在最も有効と認められている治療は「標準的治療」と呼ばれています。一方、難治性の進行がんでは、標準的治療を 行っても、多くの場合満足できる結果をもたらすのは難しいことです。そのため、さまざまな新しい治療法が研究され、試みられています。新しい治療法は最新 の情報をもとに、よりよい治療を目指して行われますが、必ずしも標準的治療よりもよい結果をもたらすとは限りません。新しい治療法は担当医だけでなく、多 くの専門家の認める理にかなった方法で、一定の管理のもとで行われる場合を「臨床試験」といいます。これから治療を受ける場合は標準的治療を受けるのか、 臨床試験中の新しい治療法を受けるのか、どちらかを選ぶことになります。
婦人科のがんで最も多いのは子宮がんです。子宮がんは子宮頸部がんと子宮体部がんに分けられます。子宮体部がんは子宮内膜がんとも呼ばれるように、胎児を 育てる子宮の内側にある子宮内膜から発生する病気です。一方、子宮腟部や頸管の上皮から発生したがんが子宮頸部がんです。また、成人になると子宮はくぼん だ西洋梨状になります。
同じ子宮のがんであっても、 子宮体部がんと子宮頸部がんは、診断・治療・予後においてすべて異なりますので、子宮体部がんと子宮頸部がんの違いを正しく理解することが大切です。
年齢別にみた子宮体部がんの罹患(りかん)率は、40歳代後半から増加し、50歳代から60歳代にピークを迎え、その後減少します。近年、子宮体部がんは 年齢に関係なく増加傾向にあります。罹患率の国際比較では、頸部がんが途上国で高いのに対し、体部がんは欧米先進国で高い傾向があります。
子宮体部がんは、エストロゲンによって増殖するタイプと、エストロゲンに関係なく発生するタイプに分けられます。確立したリスク要因としては、閉経年齢が 遅い、出産歴がない、肥満、エストロゲン産生がん、がリスク要因とされています。薬剤では、乳がんのホルモン療法に用いられるタモキシフェンや、更年期障 害等に対するホルモン補充療法などで用いられる、エストロゲン製剤の単独使用などが挙げられます。その他のリスク要因として糖尿病、高血圧、乳がん・大腸 がんの家族歴との関連が指摘されています。
症状
他のがんと同様に、子宮体部がんも初期のものほど治療成績がよいので、早期に発見(診断)することが大切です。もし、月経とは無関係の出血、おりもの、排 尿痛または排尿困難、性交時痛、骨盤領域の痛みなどの症状を認めたならば、婦人科医の診察を受けることが大切です。当院のデータでは明らかではありません が、子宮体部がんは、肥満、糖尿病、高血圧のある女性に多いとの報告があります。
最も普通に認められる症状は出血です。特に、閉経後に少量ずつ長く続く出血がある時は、早めに婦人科あるいは検診を受診し、子宮体部がんの検査を受ける必要があります。検診などで、子宮がんの検査という場合、子宮頸部がんのみの検査を指すこともあるので、注意が必要です。
子宮体部がんは、タモキシフェンというホルモン剤の投与を受けている乳がんの方に見つかることが時々あります。もし、このホルモン剤を服用するのであれ ば、子宮体部がんのチェックを定期的に受けることが大切です。ホルモン剤治療を受けていない場合でも、乳がんや大腸がんの方には、子宮体部がんの発生する 割合が少し高いことが知られていますので、乳がんや大腸がんを経験された方はチェックを受けたほうがよいと思われます。
治療法
子宮体部がんには、外科療法、放射線療法、化学療法、ホルモン療法の4つの治療方法があります。病気の拡がりぐあいに応じて、これらを単独に、あるいは組み合わせて治療を行います。以下にそれぞれの治療方法について説明します。
1)外科療法
外科手術は子宮体部がん の最も一般的な治療です。手術によりがんをとり除くと同時に、病気の拡がりを正確に診断し、放射線治療や化学療法などの追加の必要性を判断します。病期に よって下記のいずれかの術式を選択します。術式の違いは、切除する範囲の違いで、病期が進むと切除する範囲を広げなくてはなりません。しかし、切除範囲が 広がると手術による障害がありまキ。この2つの点を考えて適切な術式を選択します。
(1)単純子宮全摘出術と両側付属器(卵巣・卵管)切除術
腹壁を切開し、子宮、卵巣、卵管を切除します。術前の診断で、0期の場合には標準的にはこの手術が行われます。手術前の診断でI期以上の場合には、これに加えて、骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節郭清(かくせい)*を行う場合があります。
*リンパ節郭清とは:リンパ節は小さな豆のかたちをしており、全身に存在します。リンパ節は感染に対して戦う細胞を増やし、貯蔵しますが、そのリンパ節の 中にがん細胞が含まれる(リンパ節転移)ことがあります。そのため、骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節を切除して除去します。
(2)広汎性子宮全摘出術
子宮、卵 管、卵巣、腟及び子宮周囲の組織を含めて広汎に切除します。この術式は、手術前の診断で病気が子宮の頸部におよんでいる場合(II期、及びIII期の一 部)などに選択されることがあります。普通、広汎性子宮全摘出術の場合は、骨盤内リンパ節郭清を行います。同時に腹部大動脈周囲のリンパ節郭清を行う場合 もあります。
手術障害は、単純子宮全摘出術ではほとんどみられません。広汎性子宮全摘出術では、排尿・排便障害(出すことが困難になる)があります(詳しくは「女性生殖器がん手術後の排便・排尿障害のリハビリテーション」を参照して下さい)。卵巣切除は、女性ホルモンがなくなることによる卵巣欠落症状(更年期障害)をおこすことがあります。骨盤内リンパ節郭清は下肢の浮腫(むくみ)をおこすことがあります。
2)放射線療法
放 射線治療は、高用量X線または高エネルギー線を用い、がん細胞を殺し腫瘍を縮小します。放射線治療は身体の外の機械から行う(外照射)方法と、ラジオアイ ソトープを充てんしたプラスチックをがんの存在する部位の子宮腔内及び腟内に設置して行う(腔内照射)方法があります。この治療は単独または手術療法と組 み合わせて、術後に行われます。放射線単独の治療は、放射線治療を希望される場合や、高年齢あるいは他の病気のために手術の行えない場合、病気の拡がりの ため手術を行うことが困難な場合(III期/IV期の一部)などに用いられます。手術後に放射線療法を行うのは、リンパ節転移を認めた場合、病変が子宮の 壁に深く浸潤していた場合、腟壁に浸潤していた場合などがあります。
3)化学療法(参照:がんの薬物療法)
化 学療法はがん細胞を殺す薬剤(抗がん剤)を使用します。経口的あるいは経静脈的に投与します。化学療法は全身的治療とも呼ばれます。それは薬剤が血流に 入って全身をめぐり、子宮外のがん細胞を殺すことができるからです。化学療法を単独で行うのは、病気がすでに全身に拡がっている場合(IV期の一部)など があります。手術後に化学療法を行うのは、病気が子宮外に拡がっている場合など(III期/IV期)です。
4)ホルモン療法
ホ ルモン療法は、がん細胞を殺すために女性ホルモン剤を使用します。黄体ホルモンの働きのある経口内服剤が普通用いられます。手術をしない段階の診断で、0 期もしくはI期で、子宮を摘出しないで残したいと希望する若年の女性の場合に選択されることがあります。その場合、がんの病巣を含む子宮内膜をすべて掻爬 する治療と組み合わせて行います。また、再発の危険性の高い症例に対する補助的な治療として、あるいは化学療法の効果が不十分な場合や全身状態が不良で化 学療法を行うことができない場合に、化学療法にかわる全身的治療として行われることもあります。
卵巣は子宮の両わきに各ひとつずつある親指大の楕円形の臓器です。生殖細胞である卵子がそこで成熟し、放出されます。それとともに周期的に女性ホルモンを分泌しています。
卵巣にできる腫瘍の85%は良性です。卵巣の腫瘍はその発生する組織によって大別されます。最も多いのは、卵巣の表層をおおう細胞に由来する上皮性腫瘍 で、この中には良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)の他に良性、悪性の中間的な性質をもつ腫瘍(中間群)があります。上皮性腫瘍はさらに5つの細胞型に分かれ、そ れぞれ異なった性格をもっています。上皮性のがんは卵巣がんの90%を占めています。
卵巣がんの中で次に多いのは、卵子のもとになる胚細胞から発生するがんです。これについては「卵巣胚細胞腫瘍」の項を参照して下さい。
年齢別にみた卵巣がんの罹患(りかん)率は40歳代から増加し、50歳代前半でピークを迎えてほぼ横ばいになり、80歳以上でまた増加します。罹患率の年 次推移は、1975年以降緩やかな増加傾向にあります。卵巣がんの死亡率は、50歳以降増加して高齢になるほど高くなります。卵巣がんの死亡率の年次推移 では1990年代後半まで増加傾向にあり、それ以降は横ばい状態です。
卵巣がんの組織型は多様であり、その発生も、単一の機序では説明できません。卵巣がんの発生と、強い関連性を示す単一の要因はありません。卵巣がんの発生 には、複数の要因が関与していると考えられています。卵巣がんの確立したリスク要因は、卵巣がんの家族歴のみとされています。大部分の卵巣がんは散発性で すが、家族性腫瘍として、乳がんと同じく、BRCA1、BRCA2遺伝子の変異が知られています。他に、リスク要因として出産歴がないことが指摘されてい ます。また、経口避妊薬の使用は、卵巣がんのリスクを低下させます。婦人科疾患では骨盤内炎症性疾患、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症がリスク要因として 指摘されています。その他、可能性のあるリスク要因として、肥満、食事、排卵誘発剤の使用、ホルモン補充療法が挙げられます。
卵巣は腹部にあって腫瘍ができてもはじめはほとんど自覚症状がありませんので、2/3以上は転移した状態ではじめて病院を訪れます。卵巣がんに最もよくお こる転移は、腹膜播種(ふくまくはしゅ)です。転移は卵巣の表面からちょうど種をまくようにがん細胞が腹膜に拡がっていくので「腹膜播種」といわれていま す。腹膜播種は卵巣の周りにおこりやすいのですが、横隔膜という、卵巣から最も遠く離れた腹膜にもよくみられます。腹膜播種が進むと腹水がたまってきま す。横隔膜からさらに胸腔内にがんが拡がると胸水がたまってきます。
リンパ節転移もよくおこります。これは後腹膜といって腹部大動脈の周りや骨盤内のリンパ節がはれ、次第に胸部や首のリンパ節にも拡がっていきます。
転移のない卵巣がんは手術だけで治りますが、転移した状態ではじめて治療を受ける場合は、手術だけですべてのがんをとり除くことはできません。残された腫瘍に対しては、手術後に抗がん剤による治療が行われます。
症状
初期にはほとんど症状はありません。卵巣がんには、転移しにくいがんと転移しやすいがんがあります。転移しにくい卵巣がんは、がんができてから長期間卵巣 内にとどまって発育しますから、腫瘍がまだ大きくないうちは、検診などで婦人科の診察を受けた時に偶然発見されることもあります。腫瘍が大きくなると下腹 部にしこりが触れたり、圧迫感があったり、あるいは膀胱が圧迫されて尿が近くなるなどの症状で婦人科を受診することになります。転移しやすいがんの場合 は、腫瘍が卵巣内であまり大きくならないうちに転移してしまうため、腹水のために腹部全体が大きくなるとか、胸水がたまって息切れがするなど、転移による 症状ではじめて異常を自覚することが少なくありません。
治療法
治療方法には外科療法、放射線療法、化学療法があります。
1)外科療法
卵巣がんは手術によって 診断が確実にできます。また、がん細胞のタイプや拡がりの程度がわかり、その後の治療方針が決まります。卵巣がんの手術は転移の状態、年齢などによって異 なりますが、次のような方法のうちから普通(1)と(2)が行われ、さらに(3)と(4)が行われることがあります。
(1)卵巣の切除
片側の卵巣、卵管だけを切除する場合と両側の卵巣、卵管、子宮を含めて切除する方法があります。
(2)大網(たいもう)切除
大網とは胃から垂れ下がって、大小腸をおおっている大きな網のような脂肪組織です。大網は卵巣がんの転移が最もよくおこる組織であり、切除しても実害はありません。
(3)後腹膜リンパ節郭清(かくせい)
後腹膜リンパ節は卵巣がんの転移がおこりやすい部位のひとつです。転移が疑われるリンパ節を採取して検査することをサンプリングといい、リンパ節とリンパ管を系統的にすべて切除することをリンパ節郭清といいます。
(4)腸管などの合併切除
腹腔内の転移をできるだけ切除するために、大腸、小腸、脾臓などをがんと一緒に切除することもあります。
2)放射線療法
高 エネルギーX線を身体の外から照射する外照射と、放射性リン(32P)の溶液を腹腔内に注入して内部から腹膜の表面を照射する方法があります。卵巣がんで は手術後の残存腫瘍に対して、以前はよく放射線療法が行われましたが、最近では化学療法のほうが主に行われています。しかし、脳に転移した腫瘍に対しては 放射線治療が行われます。
3)化学療法(参照:がんの薬物療法)
抗 がん剤を使う治療を化学療法といいます。抗がん剤は手術でとりきれなかったがんに対する治療として使われます。卵巣がんは、成人のがんの中では抗がん剤が 比較的よく効くがんのひとつです。抗がん剤は内服、あるいは静脈注射で投与されます。また、直接腹腔内に注入されることもあります。いずれの場合でも、抗 がん剤は血液中に入り全身に広がって作用します。抗がん剤はがん細胞に強い障害を与えますが、正常の細胞にも影響を与え、副作用をおこします。抗がん剤を 繰り返し使うことによって、がん細胞が完全に消滅することもありますから、効果がある限り、ある程度副作用がおこるまで使用します。卵巣がんによく使われ る抗がん剤の副作用として、血液中の白血球と血小板の減少、貧血、吐き気や嘔吐、食欲の低下、脱毛、手足のしびれなどがおこります。
治療は病期、年齢、がんの組織型、がん以外の病気の有無などによって異なります。病状に応じて現在、最も有効と認められている治療は標準的治療と呼ばれて います。難治性のがんでは、標準的治療は満足できる結果を多くの場合もたらすことができません。そのためさまざまな新しい治療法が研究され、試みられてい ます。
新しい治療法はよりよい治療を目指して行われますが、必ずしも標準的治療よりもよい結果をもたらすとは限りません。新しい治療法の試みは、担当医だけで行 うのではなく、多くの専門家の管理のもとで「臨床試験」として行われます。新しい治療と標準的治療を比較する臨床試験を比較試験といいます。比較試験の結 果、新しい治療が優れていることがわかれば、新しい治療を標準的治療とします。
これから卵巣がんの治療を受ける場合は、「現在の標準的治療」を受けるか、「臨床試験中の新しい治療」を受けるかどちらかを選ぶことになります。
大人の女性の乳房は、乳頭を中心に乳腺が放射状に15〜20個並んでいます。それぞれの乳腺は小葉に分かれ、小葉は乳管という管でつながっています。乳が んの約90%はこの乳管から発生し、乳管がんと呼ばれます。小葉から発生する乳がんが約5〜10%あり、小葉がんと呼ばれます。乳管がん、小葉がんは、乳 がん組織を顕微鏡で検査(病理学的検査)すると区別できます。この他に特殊な型の乳がんがありますが、あまり多いものではありません。
年齢別にみた女性の乳がんの罹患(りかん)率は30歳代から増加し始め、50歳前後にピークを迎え、その後は次第に減少します。女性では、乳がんにかかる 数は乳がんで死亡する人の数の3倍以上です。これは、女性の乳がんの生存率が比較的高いことと関連しています。男性の乳がんは、年間の死亡数で女性の乳が んの100分の1以下の稀ながんですが、女性の乳がんに比べて生存率が低い(予後が悪い)ことが知られています。
年次推移は、罹患率、死亡率ともに一貫して増加しており、出生年代別では、最近生まれた人ほど罹患率、死亡率が高い傾向があります。
罹患率の国際比較では、東アジアよりも欧米、特に米国白人が高く、アメリカの日本人移民は日本国内在住者より高い傾向があります。
乳がんの発生・増殖には、性ホルモンであるエストロゲンが重要な働きをしています。これまでに確立されたリスク要因の中には、体内のエストロゲン・レベル に影響を与えるようなものがほとんどです。実際に体内のエストロゲン・レベルが高いこと、また、体外からのホルモンとして、経口避妊薬の使用や閉経後のホ ルモン補充療法によって乳がんのリスクが高くなるという根拠は、十分とされています。
生理・生殖要因としては、初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がないことがリスク要因とされています。また、体格では 高身長、閉経後の肥満、が確立したリスク要因ですが、閉経前乳がんについては、逆に肥満者でリスクが低くなることが指摘されています。
飲酒習慣により、乳がんリスクが高くなることは確実、また、運動による乳がん予防効果はおそらく確実とされています。その他の食事・栄養素に関しては、脂質、野菜・果物、食物繊維、イソフラボンなどが注目されているものの、十分に根拠が揃っているものはまだありません。
その他、一親等の乳がん家族歴、良性乳腺疾患の既往、マンモグラフィ上の高密度所見、電離放射線曝露も、乳がんの確立したリスク要因とされています。
乳がんの場合、がん細胞は比較的小さい時期から乳腺組織からこぼれ落ち、リンパや血液の流れに乗って乳腺から離れた臓器(肺、肝臓、骨など)に小さな転移 巣をかたちづくると考えられています。これらの微小な転移巣が大きくなると症状が出たり、検査で検出されたりするようになり「遠隔転移」と呼ばれます。例 えば、肺に転移した場合は「乳がんの肺転移」と呼び、肺にあってもその性質は乳がんであり、もともと肺から発生する「肺がん」とは異なります。このように 遠隔転移を有する乳がんを総称して「転移性乳がん」と呼びます。乳房にがんが見つかった時点ですでに遠隔転移を有する場合と区別して、手術などの初期治療 を行ってから発見される場合を「再発乳がん」と呼びます。再発乳がんの中でも、手術をした部分だけに再発することを「局所再発」と呼びます。また、がんが 皮膚や胸壁におよんでいるためそのままでは手術ができない乳がんは「局所進行乳がん」と呼びます。
症状
1)乳房のしこり
乳がんは5mmぐらいから1cmぐらいの大きさになると、自分で注意深く触るとわかるしこりになります。しかし、しこりがあるからといってすべてが乳がんであるというわけではありません。
2)乳房のえくぼなど皮膚の変化
乳が んが乳房の皮膚の近くに達すると、えくぼのようなくぼみができたり、皮膚が赤くはれたりします。乳房のしこりが明らかではなく、乳房表面の皮膚がオレンジ の皮のように赤くなり、痛みや熱感を伴う場合、「炎症性乳がん」と呼びます。炎症性乳がんがこのような外観を呈するのは、乳がん細胞が皮膚のリンパ管の中 に詰まっているためであり、それだけ炎症性乳がんは全身的な転移をきたしやすい病態です。
3)乳房の近傍のリンパ節のはれ
乳が んは乳房の近傍にあるリンパ節、すなわちわきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)、胸骨のそばのリンパ節(内胸リンパ節)や鎖骨の上下のリンパ節(鎖骨上リン パ節、鎖骨下リンパ節)に転移をきたしやすく、これらのリンパ節を「領域リンパ節」と呼びます。領域リンパ節が大きくなってくるとリンパ液の流れがせき止 められて腕がむくんできたり、腕に向かう神経を圧迫して腕のしびれをきたしたりすることがあります。
4)遠隔転移の症状
転移した臓器に よって症状は違いますし、症状が全くないこともあります。領域リンパ節以外のリンパ節がはれている場合は、遠隔リンパ節転移といい、他臓器への転移と同様 に扱われます。腰、背中、肩の痛みなどが持続する場合は骨転移が疑われ、荷重がかかる部位にできた場合には骨折をおこす危険もあります(病的骨折)。肺転 移の場合は咳が出たり、息が苦しくなることがあります。肝臓の転移は症状が出にくいですが、肝臓が大きくなると腹部が張ったり、食欲がなくなることもあ り、痛みや黄疸が出ることもあります。
治療
乳がんの治療には、外科療法、放射線療法、薬物療法があります。外科療法と放射線療法は治療を行った部分にだけ効果が期待できる「局所療法」であり、薬物療法は「全身療法」として位置づけられます。
1)外科療法
乳房にできたがんを切除 するために行います。がん組織を含めた周りの正常組織を同時に切除します。切除する範囲は乳房内でのがんの拡がりによって決められます。通常、乳がんの切 除と同時に、わきの下のリンパ節を含むわきの下の脂肪組織も切除します。これを「腋窩(えきか)リンパ節郭清」と呼びます。
乳がんの手術には、次のような術式があります。乳房を切除する手術を受けた後のリハビリテーションについては「乳房切除術後のリハビリテーション」の項を参照して下さい。
乳房のしこりを切除する手術
(1)腫瘍核出術
乳房のしこりだけを切除する手術です。吸引細胞診や針生検で術前にがんの診断がつかない時に行われることが多く、がんの手術としては一般的ではありません。
(2)乳房部分切除術
しこりを含めた 乳房の一部分を切除する方法で、「乳房温存手術」と呼ばれます。病変の部位や拡がりによって、乳頭を中心にした扇形に切除、あるいはがんの周囲に2cm程 度の安全域をとって円形に切除します。しこりが大きい場合、乳がんが乳腺内で拡がっている時、乳腺内にしこりが複数ある場合には、原則として温存手術の適 応にはなりません。通常手術後に放射線照射を行い、残された乳房の中での再発を防ぎます。
(3)単純乳房切除術
がんのできた側の乳房を全部切除し、わきの下のリンパ節の切除は行わない場合をいいます。
(4)胸筋温存乳房切除術
乳房とわきの下のリンパ節を切除します。場合によっては、胸の筋肉の一部分を切り離すこともあります。この術式が最も一般的な乳がんの手術方法です。
(5)胸筋合併乳房切除術(ハルステッド法)
乳房とわきの下のリンパ節だけでなく、乳腺の下にある大胸筋や小胸筋を切除します。かつてはこの手術方法が標準的手術方法として実施されてきましたが、現在ではがんが胸の筋肉に達している場合だけ行われます。
わきの下のリンパ節に対する手術
(1)腋窩リンパ節郭清
通常、乳がん の切除と同時に、わきの下のリンパ節を含むわきの下の脂肪組織も切除します。これを「腋窩リンパ節郭清」と呼びます。腋窩リンパ節郭清は、乳がんの領域で のリンパ節再発を予防するだけでなく、再発の可能性を予測し、術後に薬物療法が必要かどうかを検討する意味で非常に重要です。腋窩リンパ節郭清を行うと、 手術をした側の腕にリンパ浮腫(むくみ)が出たり(報告によって異なりますが、頻度は10〜20%程度)、肩の痛みや運動障害がおきることがあります。
(2)センチネルリンパ節生検
センチ ネルリンパ節とは日本語で「見張り番リンパ節」という意味であり、乳がんからこぼれ落ちたがん細胞が最初に到達する乳腺の領域リンパ節のことを指します。 がんの近傍に放射線同位元素や色素を注射することにより見つけます。多くの場合は、わきの下のリンパ節がセンチネルリンパ節になりますが、センチネルリン パ節に転移がない時、多くの場合、わきの下のリンパ節に転移がないということがわかっています。センチネルリンパ節生検は腋窩リンパ節郭清を行わなくても よい可能性がある患者さんを選ぶ手段として期待されていますが、現在ではまだ研究段階の治療です。
乳房再建術
がんを切除する手術で失われた乳房を自分の筋肉、または人工物を使用し形成する手術です。乳頭を形成することもできます。再建術を希望する方は担当医とよく相談して下さい。
2)放射線療法
放 射線にはがん細胞を死滅させる効果があります。放射線治療は放射線照射を行った部分にだけ効果を発揮する局所療法です。乳がんでは外科手術でがんを切除し た後に乳房やその領域の再発を予防する目的で行われる場合(これを「術後放射線療法」といいます)と、骨の痛みなど転移した病巣による症状を緩和するため に行われる場合があります。
放射線を照射する範囲や量は放射線治療を行う目的、病巣のある場所、病変の広さなどによって選択されます。副作用は病巣周囲の正常組織にも放射線がかかる ことによっておこり、放射線があたった領域に含まれる臓器に特有の副作用が出現します。例えば、腰椎に放射線をあてた場合は皮膚や消化管の炎症などが予想 されます。
3)薬物療法
乳がんの治療に用いられ る薬は、ホルモン療法、化学療法、新しい分子標的療法の3種類に大別されます。薬物療法には薬によって重篤度は異なりますが、多かれ少なかれ副作用が予想 されます。また副作用は治療を受ける人それぞれで出方に違いがあり、個人差があります。薬物療法を受ける場合には、薬物療法の目的、期待される治療効果、 予想される副作用とその対策などについて十分な説明を受け、理解することが大切です。
ホルモン療法(参照:がんの薬物療法 12.ホルモン療法とは)
約 7割の乳がんはホルモン受容体を持っており、ホルモン受容体を有する乳がんは女性ホルモン(エストロゲン)の刺激ががんの増殖に影響しているとされます。 手術でとった乳がん組織中のホルモン受容体(エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体)を検査することにより、女性ホルモンに影響されやすい乳がんか、 そうでない乳がんかがある程度わかります。女性ホルモンに影響されやすい乳がんを「ホルモン感受性乳がん」、「ホルモン依存性乳がん」と呼び、ホルモン療 法による治療効果が期待されます。
生理があって卵巣機能が活発な女性では卵巣が女性ホルモンの主な供給源になります。また、女性は通常50歳前後を境に卵巣の働きが衰えることにより、生理 が止まり「閉経」を迎えます。閉経後の女性では卵巣からの女性ホルモンの分泌は停止し、副腎皮質から分泌される男性ホルモンが原料となって、「アロマター ゼ」と呼ばれる酵素の働きによって女性ホルモンがわずかに産生されます。閉経後の女性では女性ホルモンのレベルは閉経前に比べ1/100程度に減少しま す。
ホルモン療法には抗エストロゲン剤、選択的アロマターゼ阻害剤、黄体ホルモン分泌刺激ホルモン抑制剤などがあります。乳がんの術後や転移性乳がんに用いら れる「タモキシフェン」は代表的な抗エストロゲン剤であり、女性ホルモンのエストロゲン受容体への結合を阻害します。選択的アロマターゼ阻害剤の作用機序 は、アロマターゼの働きを抑え、閉経後の女性において女性ホルモンの産生を抑えます。閉経前の場合では、卵巣からの女性ホルモンの分泌を抑える黄体ホルモ ン分泌刺激ホルモン抑制剤を使用します。その他、プロゲステロン製剤などがありますが、作用機序はよくわかっていません。
ホルモン療法の副作用は、化学療法に比べて一般的に極めて軽いのが特徴ですが、タモキシフェンの長期間使用者では子宮がんや血栓症のリスクが、選択的アロマターゼ阻害剤の場合には骨粗鬆症のリスクが高まります。
化学療法(抗がん剤)(参照:がんの薬物療法)
化 学療法は細胞分裂のいろいろな段階に働きかけてがん細胞を死滅させる効果があり、乳がんは比較的化学療法に反応しやすいがんとされています。化学療法はが ん細胞を死滅させる一方で、がん細胞以外の骨髄細胞、消化管の粘膜細胞、毛根細胞などの正常の細胞にも作用し、白血球、血小板の減少、吐き気や食欲低下、脱毛などの副作用があらわれます。
がんに対して用いられる化学療法には注射薬や内服薬があります。使用する薬剤やその投与法によって副作用の特性やその頻度などは異なりますので、事前にそれらをよく理解し心構えをつくっておくことが大切です。
新しい分子標的療法—ハーセプチン—
乳 がんのうち20%〜30%は、乳がん細胞の表面にHER2タンパクと呼ばれるタンパク質をたくさん持っており、このHER2タンパクは乳がんの増殖に関与 していると考えられています。最近このHER2をねらい撃ちした治療法(分子標的療法)が開発され、乳がん治療を大きくかえました。ハーセプチン治療は HER2タンパク、あるいはHER2遺伝子を過剰に持っている乳がんにのみ効果が期待されます。
